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私のせいであの事故が起きた、という訳ではありませんし、オカルト話のように死んだ人たちが夜な夜な語りかけてくるということもないのですが、それでもあの事故は私を変えてしまいました。 そもそも落石事故など、自然現象の産物で私ごときの力でどうこうできたものではありませんし、ひとり生き残ったからといって恨まれたりする筋合いもないのです。 ただ、私が生き延びたのは何かの手違いであったように思えて仕方がないのです。 そして予定にはなかった存在に対して世界が居場所を用意しているようには思えないのです。 あの事故以来の私はずっと、パーティー会場で急ごしらえに用意されたパイプ椅子の席に座る予定外の客のように、いたたまれない居心地の悪さを感じながら生きているのです。 本来五人掛けである円卓は私が紛れることでいびつな六人仕様となり、卓の狭さを不運がる合席者たちの舌打ちが聞こえてくるような思いがするのです。 不幸だ、とは思いません。 ただ一人生き延びたわけですから、きっとすごく幸運なのでしょう。
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