プレイバック

私が生きていた、と知った時の両親の喜びようは大変なものでした。
父と母は顔中をしわと涙でうめて、代わる代わる私を抱きしめました。

その時の私は訳が分からず、ただ小学校に遅刻したことの詫びを口にしていたと思います。

私を降ろした後のバスが、落石に巻き込まれ、運転手を含む乗員十二人全員が亡くなったことを知ったのは翌晩になってからのことでした。

「嘘…でしょ…」

仲の良かった友だちも何人か乗っていましたし、近所のおじさんやお姉さんもバスには乗っていました。

ですが、その時の私を満たしていたのは、親しい人間を喪失した悲しみでも、死が伸ばしたその舌にすんでの所で自分も触るところだったという恐怖心でもありませんでした。

ただただ思考していました。

「本当なら自分もそこに乗っていた」という事実が私の脳の中心に居座り、それについてぐるぐると出口のない考えを巡らせるばかりでした。