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小さなバスはでこぼこの地面に揺られ、ガタガタと走ります。
細い山道はこのバス一台分ぐらいの幅しかありませんが、このバス以外に通る車もありませんので、対向車との擦れ違いを心配する必要もありません。
濡れた枝葉が窓ガラスを擦ります。
十二人の乗客はみんな座席に座っています。
私は前から二番目の席に座っていて前には仲良しのきよちゃん、後ろには悪ガキのけんさくが座っています。
お腹の痛みが耐え難いまでになってきました。
背中に冷や汗が滲みます。
小学校はまだまだ先です。
おばさんの家だってまだバス停二つ先です。
気を逸らそうとテレビ番組や昨日やった宿題のことを考えるけど、もうダメです。
お腹の痛みと、もし漏らしてしまったらという恐怖だけが私の頭を占領しています。
どうしよう
どうしよう
どうしよう
いくら考えてもどうにもならないことは分っています。
それに――――
これから起こることに比べれば多少の粗相ぐらいは気に留めるほどのことでもないのです。
なにより、そのために――
このままバスから降りないために、みんなと一緒に死ぬために、私は過去へと戻ってきたのですから。
アア、コレデヨウヤク――――――――
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