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まるで他人事のように抑揚なくしゃべるところから考えるに、弟はどうにか安全圏に乗せたようだ。昨日まであんなにじり貧だったのに、心底恨めしい。
現在8000位だし、まだ報酬圏内ではある。でも普段のペースでも10000位以内に入れるかは際どいところだ。もう少し走っておきたい。しかしイベントまで九時間ほどの猶予があるとしても、社会人である私には九時間へばりついて走ることなど、無論できない。
「……やばい」
「いつもの感じで走ってると結構キツいかもね」
とどめをさすように弟が呟いた。睨みつけてやるが、弟はまったく頓着しない。昨日の私と同じ、勝者の余裕だ。いつも以上に目をこすっているから、睡眠時間を大分犠牲にしたようだが。
とにかく、戦略を練り直すしかない。私は今日、イベントが終わるまでにどれほど時間があるか、隙間を探しながら朝食を摂った。なりふり構っていられない。休憩時間も通勤時間も、すべてかき集めてイベントに捧げるほかない。
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