そんなあなたが好きだから

商店街にて

「弥生さんはどの店に行くんです？」

「和菓子屋に…。」

「奇遇ですね、僕もです！あの店の柚子最中、美味しいですよね！」

「そうなんです！私、あの店の柚子最中が大好きで!!ちょうどこれから買いに行こうと…。」

そこまで言って我に返り、思わず下を向いた。

大好きな柚子最中の話でテンションが上がってしまったことが恥ずかしい。

私の周りの人たちは柚子より栗やつぶ餡の最中がいいとか、最中は好きじゃないと言う人ばかりだから、同じものが好きだと言う人がいて嬉しかったのかも。

「弥生さんが僕と同じものが好きなんて嬉しいな。」

こんな些細なことで、そんな嬉しそうな顔して…って、私も人のことは言えない。

「柚子最中を食べながら日本酒をチビチビ飲むのがいいんですよね。」

「あ…わかります。私もいつもそうです。」

柚子最中を食べながら日本酒をチビチビ飲むのがいいなんて人には言ったことなかったけど、なんとなく親近感が湧いて思わずそう言うと、彼はまた笑った。