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彼の母親の瞳は彼のものと似ていて、彼に見られているような妙な感覚が僅かな緊張を誘う。
「そんな顔しないで。
葉月さんが考えているような意味じゃないわ」
その意味を問おうとしたとき、控え室に姉が入ってきた。
彼の母親との挨拶も忘れ、彼女は私の下に駆けて飛び付いてきた。
走ってはいけないと言う間もなく、彼女の行動は早かった。
「葉月」
「弥生姉……」
「すっごく綺麗」
「ありがとう……。
身体は大丈夫?」
「大丈夫大丈夫」
彼女は今三人目を妊娠中だ。
お腹は大きく膨らんで今にも出てきそうなほどだ。
予定日は来月、皆今日来られるかとても心配していた。
「本当綺麗、さすが私の妹」
姉の登場で私の緊張がやや解れた。
「弥生、いい年になって恥ずかしいわ。ご挨拶もしないで……。
蓮池さん、申し訳ありません」
「いいんですよ、姉妹仲がいいことはいいことだわ」
それに姉は苦笑して、彼の母親に挨拶をした。
姉とは再会してからのほうが、昔より仲が深まったかもしれない。
彼がいない休日は、姉の家族と行動を共にすることもある。
子供たちは私になついて、たまに長女である美月ちゃんは一人でわが家に泊まりに来ることもある。
その際は彼女は彼にべったりで、私は少しだけ寂しい思いをすることもあったり、なかったり……。
子供にやきもちなんて恥ずかしくて彼には言えないから、私の密かな秘密である。
ただ、そんな姉の子供と接する度に私も母親になったらと想像することも多くなった。
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