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木々が鬱蒼とひしめく森を齢17、18の少女が朧げに歩いていた。
白いワンピースに黒く長い髪。ワンピースは森の中を彷徨い続けてついてしまった泥で汚れている。
彼女の細く白い腕や足は傷だらけだったが、森の枝や岩に傷つけられた訳ではない。
青あざ。叩かれたような跡。それは、誰かに危害を加えられてできた傷だと容易に想像がつく。
少女は扉を探していた。伝説として伝わる、扉を。
べつの世界に行けるという扉。
そんな話を信じるくらい幼くは見えないが、藁をもすがる思いなのだろう、足取りこそおぼつかなくとも、その目にはしっかりと光が宿っていた。
怒りと言うべきか、憎しみと言うべきか。その光は正しい光ではない。純情な少女の目を汚した原因は一体なんなのだろう。
木々はそんな少女の鬼気迫る眼光に怯えて、扉までの道を開いていった。
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