森の小屋

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少女の行く手に、壊れかけた小屋が現れた。薄く霧のかかった森の中に、いきなり出てきた小屋の屋根は苔が生え、壁に穴が空いている。 外から見る限り、木こりが使うような道具の他に、陣取っているものはない。 このあたりは、人がほとんど入らない。獰猛な獣が多いからだ。もう、この小屋にもしばらく人は入っていないだろう。 この小屋は、日々の霧のせいで湿った暗い雰囲気を醸し出している。とてもじゃないが、良い寝床とは呼べない。 しかし、そんなみすぼらしい小屋でも、少女が一息つくには十分だった。 はじめは、幽霊でも出るんじゃないかと、入る事をためらっていたが、少女は、今の自分の方が幽霊みたいね、と、苦笑いして湿った扉を押した。 手には、森色の苔がついた。少女は手のひらを鼻先まで持って行った。土の香りがする。自然に直接触れられて、少女は少し頬が綻んだ。 少女の笑顔で、あたりに木漏れ日が射す。彼女は、決して笑わないわけではない。何かが、少女を「笑わせな」かっただけなのだ。
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