森の小屋

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少し開いている隙間から、小屋の中を覗いた。しかし、夜でもないのに灯りが射さず、闇が広がっている。 少女は扉を完全に開けようと腕を差し出した。 そこに、1匹の赤とんぼがすーっとやってきた。そして、白い腕の上に止まると、そこが落ち着いたのか飛び立とうとしない。 少女は驚いたが、赤とんぼが驚いてしまう、と、腕を動かさなかった。赤とんぼはゆっくりと、肩の方へ動く。そして、赤とんぼと肩の青いアザが重なった。 少女はその忌々しい青あざを見てしまった。。うっすらと笑みを浮かべていた少女の顔が、一瞬で強張る。 思わず腕をビクッと動かしてしまった。少女はその瞬間、まずい、とはおもったが、案の定赤とんぼはどこかへ飛び去ってしまう。 とんぼは何にも縛られずに自由だった。少女はハッとした。私は、自由を求めてこんな森の奥まで来たのだ。こんな所で休んでいる暇はない、と。 少女は、開きかけた扉の先へ足を運ばずに、踵を返そうとした。 しかし、その時、暗い小屋の奥で、ガタン、と重い音がした。少女はビクリと肩を震わせ、ゆっくりと後ろを振り返る。 もしかして、ここには誰か住んでいたのか。それとも、獣か。
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