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もし獣だとして、ここで喰われてしまうのもそれはそれで、いい。この世から去ることが出来るなら。
少女は、恐る恐る、だが確実に小屋へ一歩を踏み出した。
暗闇の奥に、光を反射している何かがある。
鈍い光だ。しかし、少女はそれに心惹かれた。美しいとさえ思った。なぜだか少女は、その光が自分を待っているのだと感じた。
少女はそれに恐れを感じなかった。小屋の隙間から入ってきた砂つぶを踏みしめながら、一歩、一歩近づいていく。
そして、それが何か分かるくらい近づいた時、いきなりそれはモーターのような音と共に動き出した。
薄汚いロボットだった。
ところどころ錆びて、赤茶けた頭は、こちらを向いている。
泥道を歩いた後のような足はこちらを向いている。
すこしへこんでいる指の腹はこちらを向いている。
「やぁ、よく来たね。」
ロボットは、森の木漏れ日を背中に浴びて、鈍く光った。そして、続けた。
「君を待っていたよ。」
腕を左右に開いて、少女を迎え入れるロボットの声は、懐かしいくらい、優しい声だった。少女は、自分を待っていると感じたことは間違っていなかったのだと悟った。
「どうして私を待っているの?」
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