第1章

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とにかくあの人を避ければいい! 社員食堂に行かずにお弁当は公園か自分のデスクで。 だが避けようと意識する程にトイレや廊下ですれ違う。 『長谷川さん避けてる? 社員食堂にも来ないで不自然過ぎてさ…お弁当に隠さなくちゃなんない訳でもあんの?』 『いや、まあ………』 避けずに普通に社員食堂で曖昧な返事で話題をスルーしてしまえば良かったかも~! ― ―― ――― 木曜日の夜、 自室に招き入れたのはレシピを頼んだ彼女。 そして――― 『怪我をしたあたしの代わりに従姉妹のアイコが料理をしてくれるわ』 いかにも不自然かつ不器用に包帯を巻いた指先の舞が隣を示す。 『従姉妹ではなく親友のアイコ、よろしく』 腰に届くサラサラの黒い髪をゆるくみつ編みにしたアイコは、 グレーのワンピースに髪の色と同じフリルのエプロン姿だ。 そんなアイコを見る舞は大きめの白いニットにジーンズ生地の膝丈のスカート姿で帰宅後簡単に着替えたらしい。 『怪我ってどうしたわけ?昨日までは何もなかったわよね?』 招かれざる来客の彼女が首を傾げる。 『怪我って突然な訳だから…』 『嘘っぽーい』 舞と彼女の会話を遮るかのようにアイコはイワシを三枚に卸し始めた為に、 彼女の意識はアイコにいき舞はホッとする。 1時間後、 食欲をそそる香ばしい匂いが漂い完成が近いと物語る。 炊きたてのご飯と味噌汁も添えての夕食となった。 『あたしアイコさんみたいに早くは出来ないから参考になんないわ』 彼女が諦めたような笑いを交えて。 『褒められてる?けなされてる?ねぇ、舞』 アイコは舞を見る。 『褒められてるんじゃない?もうすぐ10時になるけど2人とも帰った方がいいわ』 舞は食器を持ちソファーから立ち上がった。 『舞、洗い物まで終わらせてから帰るけど?』 『相か…アイコさん大丈夫だから』 ともかく早く終らせてゆっくりしたいの、 だから早く部屋から出ていって。 『長谷川さんがいいって言うんだからコンビニまで一緒しない?』 彼女はアイコの腕に触れた。 『アイコさんっていい体してない?』 彼女のセリフは2人をもビクッつかせて。
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