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オシャレなブティックにオープンカフェ、街を彩る車に歩く人々は時に忙しなく時に楽し気に談笑しながら明るい街を歩く。
都会の街は眠らない、いつだって街は人を明るく照らし人々もそれが当たり前だと思っている。
しかし、それは表の姿。
明るい街から一歩裏路地へと足を踏み入れると、そこは明るい街から一転して真っ暗な闇の街へと切り替わる。
真っ暗な一本路地、そこをただひたすらまっすぐ歩けば、少し開けた道にその店は存在する。
怪奇買取『怪談屋』
妖しげな看板を掲げるその店は、中に入るとわら人形に豪華なシャンデリア、挙句の果てには見たことのない大粒の宝石が飾られているが決して手を触れてはならない。
何故かって?
看板を見ればわかる通り、何故ならこの店で扱うのはどれも怪奇怪異に満ち溢れているものばかりだからだ。
少し待てば、店の奥から真っ黒な着物に手毬や菊の刺繍が施された羽織を羽織った美丈夫が現れる。
ここで買い取ってくれるのは怪談話ただ一つ。
ただの怪談だと思うなかれ、ここでは怪談が金で売買されるのだ。
安いものだと数百円、高額なものだと数百万円という値段で怪談が買われることもあるのだ。
怪談の値段を決めるのはただ一人、店主だけ。
私の仕事はただ一つ、客が話す怪談を書き綴るのみ。
チリリとドアベルの音が鳴り、今日も誰かが怪異を語りに訪ねてくる。
店主は、美しい顔に笑みを浮かべてこう言うのだ。
「貴方の怪談、買い取ります」
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