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急にまともな質問だ。影響か……よくある話だけど、高校の時の担任の先生だな。三ヶ国語習おうと思ったのも、つきつめれば先生が一生懸命私の進路を考えてくれたからなんだよね。女性の先生で美人だったけど、熱くってすごくかっこよかった。其処が嫌いだって言う人もいたけど、私はああいう人になりたいなって思ったから。
「だからお姉さんってなんか、良い人って言うか……うん。良い人なんだね」
私が良い人に見える言動なんてした覚え無いけども。先生だけじゃない、色んな人と出会って、私は成長したんだよ。だからね、貴方も私だけじゃなくって、色んな人と関わってもっと広い心を持ってほしいな。
「ソレ、きっと本音なんだろうね。素直な人だから。……嬉しいけど、僕には無理なんだ。僕には多くの人と関わることなんて」
もしかして引きこもり?
「うん、そんな感じ」
だったら、尚更私と一緒に此処を出よう? あのね、外の世界は怖いこともいっぱいあるし、怖い人もいっぱいいるよ。でもね、傷ついて、ボロボロになった心を癒してくれるのもまた、人なんだよ。
彼の返答が無く、暫し静寂の中歩く。やっとトンネルの向こう、真っ白な光が私達を迎えてくれた。
出ましょう? 今度は引っ張られない様に強く、強く握りしめる。
「……やだ、行かないで!」
ブスッ。今度は背後から刺される音。そして痛みと無気力と嫌悪しちゃう温もりと。倒れる前に、また彼が私を抱えた。
……行かないで? 元の世界に戻ったら離れ離れになるから?
彼の心を癒すまで、きっと進めないんだろうな。どうしようもなく、フッと笑みがこぼれた。私は彼の膝の上で眠りについた。頬に、血とはまた違う生温かい液体が落ちてきた。その感覚は、きっと一生忘れないんだろうな。
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