一章

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1   街行く人がマフラーやコートを脱ぎ始める春の初旬に、新岩路駅南口ショッピングモールの外れにある地下のカジノで銃声がする。 犯罪都市新岩路では銃撃戦は珍しくない。 だが、非合法カジノ内で銃声は希だ。   騒ぐ客の中で、腹から血を流している男がいた。 黒のトレンチコートを着た彫りの深い無骨な男が患部を押さえ介抱する。 「おい!リャン、しっかりしろ」 「……ユンファ…う、裏切り者に殺られた」リャンは言い終わると共に息を引き取る。 「くそ」 舌打ちをし、ユンファは店を出る。 組の幹部タオに連絡する。 「俺だユンファだ、モール外れの裏カジノで、リャンが銃で殺られた」 「……殺ったのは?」 タオの声が低くなる。 いつも笑っている彼とは趣を異にする。 「わからない」 「わかった。検死や葬儀の手配は俺が取り仕切る、お前はラウと一緒にリャンを殺った奴を特定しろ」 「おれらに影響がなさそうな相手だったら、殺ってもいいか?」 「お前ならその塩梅、わかるだろ」タオは素っ気なく返す。 「わかった」通話を終え、ユンファは弟分のラウをカジノ近くの喫茶店に呼び出す。 喫茶店内は、30年の歴史を感じるような白髪白髭のマスターが観葉植物に水をやっている。 喫茶店内に待つ事10分、スポーツ刈りの男がやってきた。 「兄貴遅れてすまねえ」ラウがユンファに謝る。 「別に構わねえよ。メール見たんだろ」 「はい。リャンさんの仇、きっちり見つけて殺りましょう」 「でだ、ラウ。俺にはちっと心当たりがある」 「本当ですか。さすが兄貴だ」  「さすがってなんだよ」 ユンファは悪態をつく。 「ただよお、」ユンファがラウに耳打ちする。「そいつは俺らのファミリーの人間なんだよ」 「え!!」今はテーブルを掃除していたマスターの手が止まる。 
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