一章

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3   藤堂組のいかつい塀に囲まれた事務所へユンファとラウが向かい、小津にコンタクトをとる。 敵対勢力同士であるが、すんなりと小津の個室へ案内される。 ユンファは内心いらだっていた。 野郎、自分の価値がわかった上でガードなしで面会、てか。 挙げ句、携帯で仕事の電話をして対面した際は小津に強烈な怒りを覚えた。 隣にいたラウが自分以上にキレていたので、我に返る。 「……ああ、今度の会議で話すか……だから、気軽に素人に売るな。ああ、わかった。……無理はすんじゃねえぞ」 通話が終わり、ビジネスマンみたく身だしなみを整えた背広姿の男がユンファ達に謝る。 「で、」小津は電話と同じ事を繰り返す。「電話で話した通り俺は知らない」 「じゃあ、なんでリーアの財布にお前の連絡先が書いてあるんだ?」  ユンファが小津に訊ねる。 「リーアは、昔俺の組でも仕事してたからな。記録がずっと残ったままとしか言えない……ユンファさん、その程度の事で俺に会いに来たのか」 「…まあそんなとこだ」こいつ、何か隠しているな。 「…ふん」 「お前がリャンを殺すように命じたんだろ!」ラウが吠える。
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