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「おう、テラ」露店で肉まんを頬張っている男に、ユンファが声をかける。
「ユンファかよ」
「おい、てめえいつから俺に舐めた口叩けるようになったんだ」
「すまねえ。ちっと別な件で荒れててな」
慌てて言い繕いテラは、はちきれんばかりの巨大な腹をさする。
チャイポン一家のテラに聞き込みをする、とラーメンをすすりながらユンファが提案し即時決議された。
「そうっすね、兄貴。いきなり藤堂のシマ行ったら、やばいです」
「昼の事務所も、あんなすんなり行くのがまずありえねえからな」
踊らされている。
小津のバカにしたかのような態度に腹が立つ。
俺はおめえの操り人形じゃねえんだぞ、とユンファが奥歯を強く噛みしめる。
「で、テラを藤堂のシマへ案内させて、藤堂組の連中から聞き回るんですよね」
「ああ」
テラには、昔命を助けてやった恩がある為、多少の融通が利く。
藤堂組から潜れないなら、入り口を変えるまでだ。
「何があったんだよ」
「……どうせばれるし、ユンファだからな。他言無用で頼む。最近俺達の仲間が殺し屋のような奴に殺られてんだ」
「そうか」
「んで、俺もそいつを探してんの。どういう背格好なのかも皆目検討つかねえ」
ベラベラと喋り続けながらも、肉まんを食べるのを止めないテラにユンファは呆れる。
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