策士と始動しました。

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「じゃ、まずは俺から。」 そう言って西野先輩は、おどけたように軽く一礼した。 その仕草は本当に紳士みたいで、先輩に惚れていなくても、思わず目を奪われる。 「改めまして、西野貴晴です。3年3組で、部活はもう引退したけどサッカー部。誕生日は3月17日。好きなことは…音楽を聴くことかな。特に90年代の曲が好き。」 「あ、分かります。昔の音楽いいですよね。最近の曲は、どうもテンポが速すぎて歌詞が聞き取れなくて。」 「聞き取れない、って…好き嫌い以前にそっちの問題なのね。」 どうしてだろう、西野先輩の前だとポンポンと素の自分を出せる。 今までは本当に好きなものを押し殺してきた。 好きな歌手なんて聞かれたものなら、イマドキの歌手の名前を挙げて、「あの恋愛ソング切ないよねー」なんて思ってもないことを言うのが常だった。 臆することなく本音を言えるのはきっと、西野先輩が個性を個性として受け入れてくれる、懐の深い人だから。
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