生まれる前から背負った物語

13/146
前へ
/146ページ
次へ
 セイの革製品と肉の評判は村だけではなく町や都市の方にまで広がった。  武将が自分の武具や装束に革を使いたがった。  セイは自分の所在を決して明かさなかった。  人が乗り込んで来ると面倒が起こることが分かっていたからだ。  セイとフサは心から自然を愛していた。  近くにいる動物はほとんど識別できた。  熊も鹿も狼も二人になついた。  セイが猟をするのは年老いた動物、 病気を患ったもの、 増えすぎたオスだけだった。  セイは自然の摂理をよく理解していた。  夫婦には一人の娘がいた、 リリという名だった。  リリは両親の愛に包まれてすくすく育った。  周りの動物とも家族のように接した。
/146ページ

最初のコメントを投稿しよう!

178人が本棚に入れています
本棚に追加