生まれる前から背負った物語

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 リリが14歳になった頃、 セイは山から一匹の狼の子を抱いて帰って来た。  白い、 ガリガリに痩せた、 今にも死にそうな狼だった。 「この子は狼一族から見捨てられたんだ」  セイが言った。  狼の世界では地位や身分が厳しく決まっている。  地位が低いメスから生まれた子供の場合、 生命力がないと生きていけない。  下層の狼には食べ物が回って来ないのだ。  この弱い白い子供を見捨てて一族は去って行った。  強い者だけが生き残る、 自然の掟だった。 「この子、 一生懸命みんなに付いて行こうとして頑張ってたのね」  リリは涙ぐんだ。    それからリリは狼の子を育てた。
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