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公園のベンチに一人の老人が座っている。何をするでもなく、老人はただ座っていた。
公園内には老人の他、公園の遊具や、鬼ごっこをして遊ぶ子供達の姿。傍らでは母親達が井戸端会議に花を咲かせている。
いつしか日も暮れかけ、先程まで公園内を賑わせていた子供達や、晩御飯の支度をと母親達は家路に着き、その後、時折、犬を散歩させた人が数人通る。
彼らが去ると、公園内には老人が一人だけとなった。
日が完全に沈み、公園の外灯が灯る。
老人は相変わらずベンチに座っている。その日、老人に声を掛ける者はなく、また、老人が誰かに声を掛ける事もなかった。
数時間が経ち、そろそろ日付が変わろうとした頃、老人の前にスーツ姿の男が現れ、
「どうもありがとうございました。これはお礼です」
と、現金の入った茶封筒を懐から取り出した。老人はその封筒を受け取ると、「またいつでも言ってくださいね」と言い、去っていった。
スーツ姿の男、一日中老人が座り続けたベンチの温もりで興奮する性癖の事など、妻に言えるはずもなく…。
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