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ジョフリーの屋敷を辞去して、テッドはアニタと連絡を取り合って彼女の家に向かった。そして彼女の両親と兄に会い、彼女との婚約を認めてもらった。
アニタの家族は彼女の夢をよく知っていたので、アニタが婚約者と二人でニューヨークに旅立つこと、テッドが仕事を見つけてアニタを養い、当分の間はアニタがダンスに専念できるよう支えてくれること等を聞いて、とても喜んだ。
ひとしきり喜びの談笑のあと、テッドはアニタの兄のニコラスから、夕食の支度ができるまで散歩しようと誘われた。ニコラスはアニタと面差しがよく似ていたので、テッドは親しみを感じていた。
ニコラスはチェックのシャツを着て、ジーパンとウェスタンブーツを履いていたので、やはり何となくカウボーイのイメージがあった。
外は薄暗くなりかけていたが、辺りは住宅地だったので街灯があり、歩くのに不便はなかった。
家ではにこやかにしていたニコラスが、散歩に出ると、心配そうに自分を見ているのにテッドは気づいた。
ニコラスはアニタとは二つ違い、テッドと同じ二十一歳で地元の大学に通っていた。
「ニコラスさん、何か、僕に言いたいことでもありますか?」テッドはニコラスが話しやすいよう自分から会話を切り出した。
「ニックでいいよ。それに丁寧に話さなくていい。同い年だから、僕もそうする」
ニコラスはアニタとは二つ違い、テッドと同じ二十一歳で地元の大学に通っていた。
「では、ニック。どうぞ」テッドは微笑んだ。
「テッド、僕は妹の幸せを両親に負けないくらい強く願っている。けど、君を巻き込んでいいものかと…」ニックは顔を曇らせて言いよどんだ。
「巻き込む?」テッドは怪訝(けげん)そうに聞き返した。
「だって、君は今まで文句なしの仕事をしていたんだろう? それなのにその仕事を捨ててまで、アニタに引きずられるようにニューヨークに行くなんて…。幸せになれる保証もないのに…」
「アニタと出会った時から僕は幸せだけど?」テッドは首を傾げた。
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