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「君はまだアニタの本性が見えてないから、そんな呑気なことが言えるんだ! アニタは高校に入学した時から、ニューヨークに行く決心をしていた。高校に通いながらバイトをして…僕が呆れるくらい脇目もふらずにバイト三昧でお金を貯めてた。自分の夢の実現のためだから、金銭面では両親にも頼りたくないってね。見ての通り、うちは中流家庭だ。僕を大学に行かせるのもやっとなくらいで…だから僕もバイトをして、できるだけ学費は自分で払ってる。とはいえ、そのせいでアニタは進学しないんじゃないよ。大学なんて妹の眼中にはない。アニタは本気で、ニューヨークで認められるプロのモダンダンサーを目指してるんだ。でも、それはアニタの夢だ。テッド…君にも自分の夢があるんじゃないか? それを諦めて無理してアニタに尽くすのは、本心では納得できていないだろう? 本当はすぐにもアニタと結婚して、アニタに家庭にいてもらいたいのが本音じゃないのか? だけどアニタは決して自分の夢を諦めないよ。君を捨ててでも夢の実現を選ぶ子だ」
ニックは一気に言い切って、すまなさそうにテッドを見た。まるで妹の代わりに彼が詫びているような感じだった。テッドはニックを安心させようと思った。
「ニック、僕のこと心配してくれてありがとう。でも、アニタを応援するのが僕の夢だから…僕は何も無理してない、大丈夫だ。確かにアニタと結婚はしたいけど、アニタから『これだけは譲れない!』って言われてるから…。でも僕は待てる。アニタは僕のことを想ってそう言い張ってるだけだから」テッドはにっこりした。
だがニックは渋い顔のままだった。
「うちはカトリック信者だしな…。察しはつくよ。カトリックじゃ離婚は難しい。結婚してしまうと、君がアニタとの生活から逃げ出したくても、そうしにくくなる。アニタはしばらく結婚しないことで、いつでも君が去っていけるよう、君のために逃げ道を作っている、違うかい?」ニックは溜息をついた。
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