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テッドはアニタが自分にとても感謝してくれているのを感じた。そして同時にとても後ろめたいのだと。アニタは、いつでも彼女の元を去っていいと言いたいのだ。テッドがもう充分にアニタのために犠牲を払ったから。彼女はテッドを自分から解放しようと考えているに違いなかった。
テッドの胸に頭を付け、俯(うつむ)いているアニタ、テッドの背中に回した両腕は小刻みに震えていた。本当は傍にいてほしいのに、一大決心をして彼に去っていく選択肢を与えようとしているのだ。
テッドは安心させるようにアニタを強く抱きしめた。
「アニタ、君は素晴らしいダンサーで、僕は君の熱烈なファンだ。ファンなら君を応援するのは当たり前。それと忘れてない? 僕達、婚約してるんだよ。君みたいな素敵な女性と婚約してるのに、なぜ去っていく必要がある? それとも、もう僕に飽きた?」
テッドの愛情のこもった言葉に、アニタの目から涙が幾つも零(こぼ)れ落ちた。
「いいえ、あなたみたいな熱烈なファンは失いたくないわ!」
泣き笑いの顔をして、アニタもテッドをしっかりと抱きしめた。
テッドには、アニタが彼を愛してくれている気持ちが十分すぎるほど伝わってきた。
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