1人が本棚に入れています
本棚に追加
テッドもアニタの濃い茶色の瞳をじっと見つめ返した。そこにアニタが本当にそう望んでいる気持ちを感じた時、彼はやっと微笑んだ。
「これからは、もっと君の笑顔を見ることができるんだね。一緒にご飯を食べたり散歩に行ったり、いろいろなことができるんだね。最高だ! 本当に君に悔いがないならだけど?」
「ないわ!」アニタがきっぱり答えると、テッドはアニタの前に跪(ひざまず)き、彼女の左手を握った。
「アニタ、僕と結婚してくれますか?」
アニタは一瞬目を丸くしたが、
「こんな私でよければ喜んで!」と満面の笑顔で答えた。
アニタが答えるや、テッドはズボンのポケットから二つ折りの財布を取り出し、そこから更に何かを取り出した。
それは、小さな赤い石がついた細い金の指輪だった。テッドはそれを彼女の薬指にはめた。それはあつらえたようにぴったりだった。
「この指輪は?」今度はアニタが驚いて尋ねた。
「母からもらったんだ。いつか結婚する時がきたら、その娘さんの指にはめてほしいって。君と一緒にニューヨークに行くと決まった時に渡してくれたんだ。僕の行方不明の父が、母と婚約する時にプレゼントしたらしい」
「そんな大切な指輪を私がもらっていいの?」アニタは戸惑ったように尋ねた。
「もちろん。母から必ず渡してほしいと言われて受け取ったんだ。母が言うには『この指輪を、自分が何かの病気や怪我で失くすようなことはしたくない』ってさ。それにもし父が帰ってきたとき、その指輪が大事に身内に受け継がれていれば、そのとき母が天に召されていても、きっと母の父への想いは通じるだろうともね。母はすごく頑固なんだ。僕なんて、とっくの昔に父のことは忘れているのに…母はまだ待ってるみたいだ…」とテッドは複雑な表情を浮かべて語った。
「キャレンさんは…この指輪の赤い石のように情熱的な方ね!」
「情熱的?」テッドが理解できないといった表情をした。
最初のコメントを投稿しよう!