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テッドの行った中学や高校にも、いろいろなタイプの女子生徒がいたが、なぜか皆、上っ面で浮かれているように見え、テッドは真面目につき合いたいと思うことがなかった。
しかし、アニタは違った。不思議と全身が輝いているように見えた。何か強い意志のようなものを感じ、とても惹きつけられた。
テッドはアニタを少し見ていただけで、もっと彼女のことを知りたくなった。
テッドはアニタがコーヒーのお代わりを注ぎに来た時、思い切って声をかけた。
「あの、失礼ですが、あなたはクラッシックのピアノ・コンサートに興味はないですか?」
唐突な質問にアニタは少し驚いたようだったが、にっこりした。
「もちろんあります。クラッシックだけでなく、いろんな曲が好きです。私、モダンダンスを習っているから」
「では、ジョフリー・ハワードのピアノコンサートにあなたを招待したいのですが、いかがですか?」テッドはどきどきしながら重ねて尋ねた。
「今、この町に来ているプロピアニストのジョフリーさんですか?」アニタは驚いた顔で聞き返した。
「そうです。僕は彼のマネージャーをしています」と言ってテッドはポケットから名刺入れを取り出し、そこから名刺を出してアニタに渡した。
「僕の名前はセオドア、親しい人にはテッドと呼ばれています、よろしく」
テッドが手を差し出すと、アニタは驚いた顔のまま機械的に手を握って握手した。
「私はアニタです、こちらこそよろしく。ほんとに招待して下さるのですか? チケットは完売って聞いてますけど?」
「僕と一緒に、舞台の袖で彼のピアノを聴くのはどうですか? 一緒に聴いてくれる人がいると僕も楽しいから」
「願ってもないお誘いですが、なぜ私を?」アニタは不思議そうに訊(き)いた。
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