1.テッドとアニタの出会い

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「気まぐれ…と言ったら失礼ですか? あなたを見ていると、動きがリズミカルといいますか、とても音楽が好きな人に見えました。ダンスをされているなら納得です。それと僕は仕事が結構忙しくて、ハワード氏のすぐ近くにいるのに、彼の生演奏をじっくり聴いたことがありません。たまには彼の演奏をちゃんと聴いてみたいと思っていました。でも、何となく一人で聴くのは味気ないなと…それで…」テッドは最後のほうはちょっと言いにくそうにしていたが、それでも勇気を出して続けた。 「あなたは可愛いから。僕も一度くらいは可愛い女性とデートみたいなことをしたいなあって…。実は女性とデートする機会もなかなかなくて…不純な誘いでしたか?」テッドは頭をかきながら恥ずかしそうに言い終えた。 「まあ、仕事が忙しくてデートもままならないってことですか? 私もそうなんです。ここ何年もデートどころではなくて…。そういうことなら、私、喜んでお誘いを受けます。テッドさん、この町で少しでも楽しい思い出を作って下さい。私のほうもハワード氏のピアノ演奏に招待していただけるなんて、こんな幸運は滅多にありませんもの。可愛いって言ってもらえたから、オシャレにも気合を入れて、めかしこんで行きます!」  アニタは眩しい笑顔で承諾してくれた。テッドは内心、舞い上がってしまい、それを隠すためにテーブルのコーヒーを一気に飲んだ。が、むせてしまい、結局恥ずかしさのあまり俯くことになった。それでもテッドは、くすくす笑うアニタと待ち合わせの約束をすることができた。
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