3 #2

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そして、 真瀬侑成は一番にゴールしてしまった。 「真瀬、10秒56」 記録用紙を持った生徒に向けて言った先生の声がこちらまで聞こえてくる。 10秒台、なんだ……。 早すぎ。 真瀬は、乱れた髪を整える事もなく、額に浮かぶ汗を拭く事もなく ――……満足げに微笑んだ。 バカしかできないと思ったら、こんな顔もするんだ……。 真瀬は後から走って来た友達にこつかれて 「はえーわ、侑(ユウ)」 「だろ?」 「だろ?じゃねーよ。 ちょっとは手加減しろ」 「するか、バーカ」 「んだと」 嬉しそうに、遊びだす。 いつもの子どもみたいな無邪気な笑顔で。 この人、男の子にも人気なんだ。 明るくて、誰とでもすぐに打ち解ける彼の周りは、笑いが絶えない。 笑顔が溢れている。 そんな彼を ”眩しい”と思った。
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