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「待って…」
あたしは、切れ切れの声で言ったけれど、彼にはその声が届かないようで
「待ってって!真瀬侑成!」
後ろから大声で叫んだ。
「お?」
やっと振り向いた真瀬侑成。
校舎を出て、ひたすら真っ直ぐに走ったあたしたちが止まったのは、ローカル線が通り過ぎたばかりの遮断機の前だった。
「悪い。早かった?」
息一つ乱さず彼が聞く。
あたしは、息を切らせながら叫ぶように言った。
「早いよ!馬鹿!」
「……マジで?」
そう言って、真瀬侑成が口角をあげて笑う。
「……なんで笑うのよ?」
繋がっていたままの手を離して、頬を膨らませて言った。
だって、笑われる理由なんてない。
息はあがっているし、多分、髪は乱れ放題だろう。
全力で走って来たから、スカートもめくり上がっていたかもしれない。
真瀬に引っ張られて走る自分の姿を想像して、落胆した時彼が言った。
「これぐらい余裕だろ?足、速いんだし」
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