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「ごめんね!今どこ?」
『今、教室にいるよー。なぁちゃんこそどこにいるの?』
「あたし? あたしは今」
その時、電車が通り過ぎた。
ゴゴゴと大きな音を立てながら、あたしたちの前を走る。
同時に強風が吹き、スカートを大きく揺らした。あたしはそれを片手で押さえながら、言った。
「ごめんね! 先に帰ってきちゃった!」
『え? 聞こえないよ~!』
あたしの声は電車の騒音にかき消されてしまったみたい。
琴音の声もはっきりとは聞こえない。
「琴音! あのね!」
少し待てばいいのに。
焦っていたあたしにはその考えがなくて、声を張り上げた。
喉がいたい。でも大声で話していた。
「あたしねっ!」
そう言った後、手の中にあったスマホがひょいと抜き取られた。
電車が遠く小さくなっていく。
騒音のない世界が帰って来た。
「な、何……?」
あたしは顔を上げて、スマホを取り上げた真瀬に小声で聞いた。
男の人のすることは、よくわからない。
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