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「美羽~っ! 忘れ物!」
「え! 嘘!」
「はい。お弁当」
「わ。ほんとだ。お母さんありがとう」
「美羽、行くぞ」
翌朝。
先に玄関を出た遥斗があたしの名を呼んだ。
あたしはお母さんからお弁当箱を受け取って、遥斗の後を追うように外へ飛び出した。
「遥斗、ちょっと待って!」
天気は晴れ。
今日も昨日と変わらない暖かい春だ。
「美羽~遥斗~。あわてなくていいからねー。ちょっとぐらい遅れたっていいんだからねー」
背後からお母さんののんびりした声がする。いつものセリフだ。
あたしは振り返り、バイバイと手を振った。
お母さんは、にっこりと微笑んでくれた。
お母さんの背後には、のどかな春の光が動いていた。
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