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「あぁ。あれね」
「本当に困ってたから、助かりました」
あの時、真瀬に
『お前はこっち』
そう言われて、心から安心した。
振り向くと
真瀬の友達は、あたしに向かってピースをしたり。
微笑んでくれたり。
女の子はよろしくねって、言って、握手までしてくれた。
踏み出せなかった一歩を彼が誘導してくれたんだ。
真瀬の友達はみんな温かかった。
真瀬によく似た優しい人たち。
彼らの事を思い出していると、真瀬はこちらを見ていた視線を海へと戻してから、言葉を放つ。
「あれは俺の欲望つーか」
……え?
「……置いときたい……つーか」
彼の背後に立つあたしには、海を見つめる真瀬の表情が見えないし、
呟くような小さな声は、聴きとりにくくて。
彼の言葉の全てを知りたくなったあたしは、彼の前に回り込もうとした。
でも真瀬は
「見んな。来んな」
そう言うと、砂を鳴らし歩いて行ってしまう。
真瀬の顔は見えない。
少し距離が開いた。
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