32人が本棚に入れています
本棚に追加
2 #2
*****
「いいって!」
「……」
「ねぇ! 遥斗ってば!」
あたしの高校の最寄駅に着くと、遥斗はさっさと電車を降り、ホームを出て行く。
あたしは唖然としてしまった。
一緒に行くって言ってたけど。ただ同じ電車に乗るだけだと思っていたのに。
もしかしてこのまま
高校まで送るつもりなの?
「遥斗! ほんとに遅れちゃうよ?」
あたしは目の前にあったスポーツバックの紐を掴んで言った。
やっと遥斗が立ち止まって、振り返って
「遅れてもいい。学校まで送る」
「ちょっ」
そして、そのまま行こうとする。
「いいって!」
あたしは持っていた紐を後ろからひっぱった。
「おい、美羽」
「ほんとにやめてよ」
「……」
「遥斗!」
人々が忙しげに行き交う駅前の広場で、言い合いをするあたしたちに向けて
「……名瀬?」
誰かの声がかかった。
最初のコメントを投稿しよう!