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先に遥斗がそちらを見て、あたしも後から振り返る。
駅前の広場の銅像にもたれかかっていた男の人が姿勢を戻して、あたしたちの所へ歩いてくる。
スマホでも触っていたのかな、手に持っていたスマホを制服のズボンに片づけながら。
あたしたちの前に立ったのは
「……真瀬」
真瀬侑成だった。
列車が到着するたびに狭い駅前の広場が人並みで埋まっていく。
あたしたちの周りも人々が行き交っている。
けれど、その場所だけ時間が止まったかのようだ。あたしは、何故かその場から動けなくて。
……力が入らなくて。
持っていた遥斗の布製のスポーツバックの紐からするりと手が落ちた時、
「待ってた」
真瀬が言った。
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