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「……」
「何かあったら連絡するから」
「何かあってからじゃ遅いだろ」
「あ、そうか。何かありそうになったら連絡する」
「……」
「絶対する」
黙り込んでしまった遥斗に再び念を押す。
あたしを見つめる遥斗の目の色が淡く変わる。
「……絶対だな」
駅前の喧騒の中でも
その言葉はしっかりとあたしの耳に届いた。
あたしは遥斗をみつめたまま、頷いた。
「うん。ちゃんと、する」
「……」
「絶対」
しつこいくらい言った。
「わかった」
すると、遥斗が折れてくれた。
頑固な遥斗が折れてくれるなんて思わなかったから、安心して、体の力が抜け落ちそうになる。あたしは自分の足に力を入れてから、ホッとして安著の息を吐くと
「じゃあ、気をつけて行けよ」
遥斗はそれだけ言って、駅へ向かって足を進めた。
あたしは、人込みに消えていく遥斗の背中を見つめていた。
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