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あたしの手首を掴んで船の前まで歩いてきた真瀬は、「先に乗れ」って言って、あたしの背中を押した。 船には、2人ずつ、5列に並んで座る。 お客が10人と舵を取る船頭さんが2人。 合計12人定員みたいだ。 船板に足を置くと、足元が濡れた。 冷たさにびっくりして、足を上げると船がグラリと揺れて、 バランスを崩してよろめくあたしを後ろにいた真瀬が支えてくれた。 「大丈夫か?」 「うん…ごめんっ」 あたしの左肩に真瀬の大きな手。 「そういう時は、ありがと、だろ?」 「う、うん。ありがと」 それだけ言って、船席に腰を降ろすと真瀬もあたしの隣に座った。 左肩に手のひらの感覚が残っている。 あたしの手なんかとは比べ物にならない。大きくて骨っぽい手の感触。 真瀬に掴まれた肩から 全身に熱が広がっていくのがわかる。 その熱は、あたしの体を通り、顔全体を紅潮させていくんだ――。
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