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唇がカタカタと震えている。
帰ろう。
聞いちゃいけない話だったんだ。
あたしは両目から溢れ続ける涙を拭こうともせずに、踵を返そうとした。
けれど、あたしの足元に何かが絡み付いて。
え、
気づいた時には、バタンと大きな音を立ててその場に倒れた。
「いった…」
右の足首が痛い。
見ると、右足に木の根が絡まっている。
「……誰?」
背後から女の子の声がした。その後、足跡が近づいてくる。
草をかき分ける足音は二人分。垣根に隠れているように倒れている自分の姿は、出来れば見られたくない。
慌てて木の根を取ろうとするけれど、曲がりくねった気の根は半ば地面に埋まっていて、引っ張っても動かない。
急げば急ぐほど思うように絡まった根を解く事は出来なくて
「……名、瀬?」
背後から名前を呼ばれてしまった。
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