22人が本棚に入れています
本棚に追加
でも、
「……ご家族は?」
突然知らない女が家にいたら、侑成の家族は驚くだろう。
もしかしたら、侑成が怒られちゃうかもしれない。
少しだけ冷静になったあたしは小さな声で聴いた。
「いつ帰ってこられるの?」
「誰も帰ってこないよ」
「え」
「俺、今、一人暮らしだから」
「一人……なの?」
「うん。俺んち離婚して父子家庭だから。父さんは出張でほとんど帰ってこないし」
そうなんだ……
明るい彼には似合わない現実に、声が出なくなってしまった。
「そんな暗い顔すんなよ。今時、離婚なんて珍しくないだろ?」
「そ、そうだね」
そう。覚えていないけど
あたしの家だって不仲かもしれないし。
そんな事、子どもには関係ないはず。
「だから、ウミの気持ちの整理がつくまでここにいていいよ」
「うん……ありがと」
彼の声色が優しくて、つられる様に微笑んだ。
最初のコメントを投稿しよう!