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布団の中に入って、今日の事を思い出している。 思い出すと言っても……夕方の坂の下で侑成とぶつかった以降しか思い出せないけれど……。 激しい衝撃と共に過去の記憶を全て失くしたあたしは 今、知らない男の子の家にいる。 本当にこれでよかったのかな…… あたし、これからどうなるのかな…… 見慣れない天井を見ていると容赦のない不安が一度に押し寄せてくる。 あたしは唇をかみ、手元の布団をギュッと握った。 布団から香りがする。 それは……侑成の香り。 あぁ……そうか。 これは彼の布団で。 『頼りないと思うかもしれないけど、全力で頼れ』 そう言いきってくれた、彼の部屋だ。 爽やかな香りに包まれながら、放たれた迷いのない言葉を思い出していると心がじわじわと温まってくる気がする。 すると、また彼の声が聞こえてきた。 『俺、ウミの事、全力で守るから』 記憶をなくした現実に、たしかに不安はある。 でも、あたしは、一人じゃない。 彼の言葉と笑顔を思い出しながら、あたしはそっと目を閉じた。 気づけばあたしは寝ていた。 彼の匂いがする布団の中で 朝を迎えた。
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