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そして、あたしは、
気づいてしまったんだ――
ピアノを弾くと、その時愛した音楽と共に、失くした記憶の欠片たちが一つ一つ蘇ってくるという事に。
それはまるで、パズルのピースみたいだった。
あたしは、優しい音色と共に落ちてくる小さなピースを拾い集めていた。
多分、今のあたしは……無くなった記憶の半分を、取り戻したように思う。
まだうまく繋ぎ合わせる事が出来ないだけで。
小さなピースたちの帰る場所が見つければ。
それらが一つの絵になれば……
あたしは“あたし”を取り戻す。
そんな予感がしていた。
そうすれば、侑成とお別れしなくちゃいけない―
この生活が終わる事は、とても悲しい事だけど
仕方のない事だと自分に言い聞かせながら、ピアノを弾いた。
侑成と過ごす時間が増えれば増えるだけ
別れ際の悲しみも増えるような気がするから。
この優しすぎる日常を
手放せなくなる気がしたから――……
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