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今もまだ震える胸は、彼の音楽のせいだろうか。
それとも……
想いを断ち切る様に立ち上がり、彼の側に行った。
彼があたしを見上げる。
茶色く澄んだ瞳の中に、小さくあたしが映っている。
「侑成、ありがと……」
「悪い。この曲を弾くつもりじゃなかったんだけど」
「うん」
「好きな曲を弾けるんだって思ったら、これが出てきた」
「……うん」
彼が弾いた曲は、リスト「詩的な宗教の中にある調べ」の中の
「孤独のなかの神の祝福」
彼はそれを自分の全てで表現した。
彼が本当に好きなのは"ショパン"ではなく、"リスト"なのだろう。
リストは、本能的に音楽を求めた、魂でピアノを弾くピアニストだ。
繊細で詩的なショパンの曲を好きだったのは、お母さんじゃないのかな?
彼は、母のためにピアノを――
ショパンを――……
弾いていたんじゃないのかな……
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