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3 #2
「そっか……そうだな」
彼は、ボロボロと涙を零すあたしの肩を持ち、もう一度自分の胸に抱きとめた。
彼の心臓の音が耳にはっきりと聞こえる。
生きてる、音。今、ここにいる証。
彼の側にいたいと思う。
離れたくない。
それはゆるぎない、気持ち。
でも、あたしは、約束をしたから―――。
しばらく抱き合った後、彼はゆっくりと肩を持って、体を離した。
光を溜めた瞳は、切なげに揺れていた。
吸い寄せられるように見つめると、彼は手に力を込めた。
肩がグッと掴まれる。彼の瞳に力が籠る。
彼は強い眼差しを向けて言った。
「じゃあ、諦めるなよ」
「……え?」
「向こうの世界へ帰ったら。次は諦めるな」
「……」
「同じことを繰り返すな」
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