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1 #2
「イヤッ!」
男の手を思いきり振り払って、逃げた。
自分でも驚くほどの大声が出た。
男がひるんだ隙に森林を駆け抜け、傍にあった公園に逃げ込み、ドラム缶の中で肩を震わす。
怖い
男の人は大きくて、汗臭くて
ギラギラしていて
――怖いっ!
先ほどの恐怖が体の中を走った瞬間、優しい瞳があたしを捕えた。
「みう? どうしたの? おなかいたいの?」
首を傾げ、手を差し伸べてくれたのは、ドラム缶の奥に隠れていた遥斗だった。
それからあたしたちは、友達と一緒に走ってその場から離れ、互いの家へ帰った。
お父さんもお母さんもいなかった。
二階へ駆け上がり、ベッドの上でブルブルと震えるあたしの側に遥斗も座る。
その震えは収まらない。
怖い怖い
男の人は、怖い――
蘇ってくる恐怖と戦うあたしの思考を閉ざすように
遥斗の手があたしの目に宛がわれる。
あたしの目隠しされ、遥斗はそっと言ったんだ。
「みう。きょうのこと、ぜんぶわすれて
これからは、ぼくがみうをまもるから」
って…………。
泣きつかれたあたしは、遥斗の隣で眠りについた。
極度の恐怖と緊張は、遥斗の言葉を信じた。
催眠術にかかるように……
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