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この世界へ落としてくれたタンポポを思い出しながら、ぽっかりと空いた光に向かって歩いて行く。
あたしが失くした過去の全てを知るために。
光が途切れた時、あたしは倉庫の中にいた。
体は浮いている。あたしは中空からその光景を見下ろしていた。
侑成が倒れている。
その下敷きになるようにして、意識の途切れたあたしがいる。
目を閉じるあたしの上に覆いかぶさっている気を失った侑成を、男が退けた。
ドサと音を立てて、灰色のコンクリートの上にほられた侑成。
彼も目を閉じたままだ。
何が、あったんだろう――。
今から何があるのだろう――。
ここからは完全に誰も知らない過去。
ドクドクと早打つ鼓動、痛む心臓を抑えながら、中空からそれを見ていると
男が動いた。
男はあたしの上に馬乗りになる。
髪を撫で、折れたであろう腕まで撫でると
服の中に手を入れようとした。
あまりにひどい現実に目をそむけようとした時だった。
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