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意識を失ったあたしは、遥斗におぶられて、帰って行く。
あたしたちが港を出たころ、パトカーが到着し、警官は、傷だらけの侑成を救助し、男は捕まった。
あたしたちは何事もなかったかのように、地元へ戻っていく。
*****
あたしが目を覚ました時、そこは、病院だった。
頭がズキズキと痛んでいるのだろう
頭を抑えようと手を動かすが、左手には、大きなギブスが巻かれ、固定されていて動かせない。
ショックの色を隠しきれない。
顔面蒼白になったあたしは、ふらふらする体を支えながら、家族を探しに病室を出て行った。
ぼうとした目だ。まだ何があったのか思い出せないのだと思う。
そして、あたしは聞いてしまった。
隣の部屋で先生とお母さんが話している内容を
「娘さんの事ですが、産婦人科の受診をお勧めします」
産婦人科?
……「どういう事?
その時、あたしは思い出したんだ。
男に殴られたあの瞬間を
意識がなくなったあたしは、あの男に――?
あたしの腕は折られ、
その上、知らない男に汚された?
「イヤっ!!」
そう思ったと同時に、あたしは
自らを過去を閉ざした。
侑成と過ごしたあの夏の記憶、全てを―――失ったんだ。
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