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ポタリとまた一つ、涙が零れ落ちた。 地上では、サイレンの音が鳴り響く。 空に浮かんでいるあたしの涙が、警察官の帽子に落ち、生地を湿らせていく。 「もういいの?」 どこかから声が聞こえた。 それは、以前にも聞いたことがある声。それにとてもよく似ている。 響く声に、あたしは耳を澄ませる。 「本当にいいの? 連れて行っても」 声がした方に目を落とす。 警察官が立っている駐車場のアスファルトの際に咲いていたタンポポがあたしを見上げて話していた。 彼女の声をあたしはもう疑わない。 あたしに過去を見せたタンポポだ。
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