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あたしはあの日の出来事を全て忘れて生きてきた。 その事件からあたしは言われのない噂話を立てられるようになる。 いじめのきっかけはそこにあった事もわからずに。 「美羽ちゃんて可愛いけどさ、でも…」 「えー、可哀想-」 可哀想と言う目が、嬉しそうに見えたのはなぜだろう。 噂は、嘘の噂を呼んで どれが真実なのか、わからなくなっていく。 それは他人にも、あたしにも同じことだった。 全てを忘れたあたしには、全てが嘘だとしか思えなかった。 今思えば、遥斗が必要以上にあたしの事を心配するのも あたしが男の人を怖いと感じるようになったのも きっとこの思い出のせいだ。 そして、あたしは嫌な事から逃れるために、記憶を操作するようになる。 その癖のような特性は、 きっと、この頃からなんだーーー あたしは、全てを思い出した。 降りかかった過去の記憶、全てを。
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