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「ねぇ。あの男は誰?」
カメラのシャッターを切りながら、男が話しかけてくる。
「……」
「彼氏なの? アイドルが彼氏を作っていいの?」
「……」
「……ち、違います。あたしアイドルなんかじゃ……」
不安と恐怖に包まれながらも、あたしはなんとか口を開いた。
「ダメだよね? 彼氏を作ったら」
けれど、あたしの声は届かない。
ダメだ。
この人は“あたし”ではない架空の人物と話している。
きっとそうだ――
声を、
声を出さなきゃ
誰か………
「助けてぇっ!!」
大声で叫んだ時だった、
「ウミっ!!!」
少し開いた倉庫の重そうな扉が勢いよく開いた。
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