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あたしは、みんなには聞こえないように、俯いて言った。
「繋げたら、よかったのに……」
「は? なら繋げばいいだろ、ほら」
言って、彼は手を差し出す。
どちらかというと彼は離したくみたいに見えた。
あたしはツンと横を向き
「だから! 彼女がいる人と……手は繋げないよ……」
彼女だなんて言いたくもない単語を声に出してしまい、語尾が弱った。
思わせぶりなバカ男。
あたしがいない二年の間に出会った素敵な彼女の事を思うと(スタイル抜群でとても綺麗な年上の女の人という空想人物が頭に浮かんでいる)
すごく胸が苦しいけど、今は……
彼の傍にいられるだけで十分。
この場所へ帰ってこられたこと。
真瀬と同じ班になれた事。
隣を歩いている今。
それだけで……十分だ。
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