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でも、何か鈍い音が聞こえるたびに、お腹辺りが重くなる。
その度に侑成は「うっ」と声を漏らした。侑成は男に背中や頭を殴っていた。
何度も何度も殴られる侑成を抱きしめながら声を出す。
「やめて、やめてっ!」
悲鳴のような叫びを男に向けると男はにやりと笑って言った。
「こっちに来たら許してあげるよ」
侑成は、殴られ続け意識を失ったのだろう。
侑成の体があたしの右側へとズルズルと落ちていく。
支えたくて、右手に力を込めたけど、
意識をなくした侑成の体は重くて、堅くて、簡単に戻す事なんてできない――。
「ほら、おいで」
眼鏡の奥で男が言う。
あたしは怖くて、怖くて
落ちていく侑成の背中に両手を回し、彼を抱きしめて
「イヤっ!」
とだけ言った。
「そんなにその男がいいの?」
「侑成……」
男の目は見れなかった。
声も聴きたくなかった。
現実を信じたくなくて、彼の頬に自分の頬を寄せる。
「侑成……起きてよ」
恐怖で震える声で侑成の名を呼ぶと、男は言った。
「じゃあ、お仕置きしなきゃね」
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