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男の手があたしの左腕を掴んだ。
ドサッと音を立てて、侑成が滑り落ちていく。
あたしの体の半分は、もう侑成に守られてはいない。
男は持っていたあたしの手を振り払うようにして離した。
勢いをつけた左腕は、コンクリートの上に叩きつけられる。
「うっ」
痛みが左腕に走る。
怖くて
痛くて
「侑成……」
あたしは、また彼の名を呼んだ。
でも、彼の意識は途切れたまま。
男の目が侑成を捕えた。
「なるほど。こいつが悪いんだよね。優奈ゃんをたぶらかしたコイツが――」
言って、侑成に目を泳がす。
嫌…
「やめて!」
あたしは彼を抱きしめた。
左手で覆うように、精一杯彼を抱きしめた。
あたしは彼を
大好きな侑成を守りたかった――
けれどその願いは届かず、男が拳を振り上げた。
次の瞬間、鋭い痛みが左手に走り、それが体全部を突き抜けて
あたしの意識は途絶えた。
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